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『花の多い教会』 - 2016.09.04 Sun

usagi2-1.jpg
『花の多い教会』
Fate ¥200 コピー A5・28頁 R18
金男主(仮)の小説本。おまけ本(A6サイズ・まんが)が付きます。

『うさぎの手繰る輪舞』の続きです。
ほぼ、二人がいちゃいちゃしてるだけ。それを見て困ったり笑ったりする言峰さんの話です。
続きからサンプルが読めます。
*表紙は山田ひろさんに描いて頂きました。

 1

 6月。終わりの見えない雨が静かに降り続いている。冬木教会の花壇では、雨を受けたバラの花が見事に咲き誇っていた。主である言峰神父が、鍛え上げられた体を土仕事に費やした結果だ。荘厳な白から雨粒が滴り落ちて、ふるりと花弁が揺れる。
 そんな中、思案顔を貼り付けた少年が一人、傘も差さずに教会の敷地をぐるぐると徘徊していた。土砂降りではないとは言え、全身がしっとりと水分を含み、髪の毛を伝って流れた雫が首を通り、シャツの中へと消えていった。
「……、よし」
 うさぎの身で虎穴に入る決心をしたのか、少年の、ありもしない長い耳がぴょこりと立ち上がる。
 扉にそっと手を当てると、ぎ、ぎ、ぎ……と思わず入室を躊躇するような威圧的な音が礼拝堂に響いた。中では、扉の音よりも威圧的な男性が、祭壇の前で聖書を開いている。恵まれた身長と体格のおかげで、カソックを身に着けていなければ、神職者とは誰も思わないだろう。そんな、神父らしからぬ神父は、突然の来客に首を傾げながら、少年に近付いていった。
「迷える子羊よ、何か用かね?」
「は、はい! あの! ……ぎ、ぎ、ぎ……」
 『ぎ』の後が続かないのは、ギルガメッシュのマスターらしき男性に、『ギルを呼んでください』などと馴れ馴れしく言っていいものなのか測りかねているからだ。しかし、『ギルガメッシュさんを呼んでください』では彼の機嫌を損ねてしまうだろう。
 葛藤の末、少年が出した結論は、
「ギルガメッシュくん、居ますか……!?」
「ぶっ……!」
 余程のことでもなければ、顔を崩すことのない神父の笑いを誘うには、十分な威力を持っていた。
 本来ならば、『サーヴァント』がこの教会に居ることを知っている者など、在ってはならない。しかし、それを神父に失念させる程の力を、少年の発した言葉は有していた。
 神父は、咳払いを一つして少年へと向き直った。手綱の付けようがないため、基本、神父はギルガメッシュを野放しにしている。ふらりと出掛けては、一か月程帰って来ないこともざらだ。この少年も、どうせ何処かで暇つぶしと称して、たぶらかしてきたのだろう。
「ぎ、ギルガメッシュ、くん、だ、な」
「はいっ……!」
「暫し待ちたまえ。今、呼んで来よう、ギルガメッシュくんをっ、ぷっ……!」
「あ、ありがとうございます!」
 少年は、全く噛み殺し切れない笑いを浮かべる神父を、見た目より良い人で良かった、と判断し胸を撫で下ろしていた。



 神父の私室、3人はゆうに座れるだろうソファに『ギルガメッシュくん』が我が物顔で寝そべっていた。
 しかしその顔はそわそわと落ち着きがない。まるで、時間指定した宅配便が来るのを今か今かと待っているかのような、居心地の悪そうな表情を貼り付けている。
 以前のギルガメッシュならば、キャビネットに入れられた神父のコレクションであるワインの貯蔵を減らしていただろう。しかし、彼がグラスを傾ける頻度はめっきり減っていた。酒を嗜む必要がなくなったためだ。
 がた、と何の前触れもなく部屋の扉が開けられる。まんじりともしない赤い瞳に神父の祭服が映ると、音にならない溜め息が一つ生まれた。
「扉を叩くくらいのことも出来んのか」
「自分の部屋に入るのに、なぜノックしなければならない。――ところで」
 こほんと、礼拝堂からこの部屋までの間、一しきり笑った喉を整えるため、咳払いをしてから、神父はギルガメッシュの前に立った。
「ギルガメッシュ……、お友達がお呼びだ」
「友だと……? 貴様、ついに気が触れたか? ……いや、もしや人畜無害そうな子供のことか?」
「ああ、……ぷっ。随分可愛らしい交友関係を築いたのだな」
 何故か含み笑いをしている神父に対して、鬱陶しそうに目を細め、ギルガメッシュはソファから上体を起こした。
「早々に連れて来い」
「おや、私に紹介してくれるのか? アレが例の『茶色の白いうさぎ』なのだろう?」
「誰がするか、阿呆が。何者であろうと、貴様には関係がない上関わらせるつもりもない」
 言峰神父は、相変わらず自分勝手なギルガメッシュの言葉に呆れながら、少年の待つ礼拝堂へと戻っていった。

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